Fintechという新たな金融サービスと強化が求められるセキュリティ対策

最近、ニュースや雑誌などで「Fintech」(フィンテック)という言葉をよく耳にします。金融とITを融合させた造語のFintechですが、じつは明確な定義はありません。
平たく読めば「金融にITを活用すること」ですが、もともと金融機関が情報システムによって事業を行うのはごく当たり前のこと。世の中でFintechと言った場合はもっと"新しい何か"を指すことが多いようです。
たとえば、特別な技術をもったIT企業が金融サービスに新規参入するケースや、金融機関が新技術の採用により前例のない金融サービスを開始するケースがFintechと呼ばれます。
急速に発展したWeb、モバイル、クラウド技術を背景に生まれたFintechは、従来の金融機関や証券企業では実現していなかった金融サービスの多様性によって、金融業の将来的な姿を大きく変えていく可能性を持っています。

●テクノロジーと独創的なアイデアで金融市場でのチャンスが広がる

フィンテックを手がける事業主体やサービス内容はさまざまです。例えば、米国では新しいアイデアを技術で実現するFintechスタートアップ企業が多数生まれている一方、グーグルやアップル、アマゾンといった巨大IT企業がモバイルネットワークによる決済サービスや電子マネー取引などを展開しています。
日本ではメガバンクが中心になって、新しいサービス事業会社を立ち上げる動きもFintechと呼ばれています。また、LINEやFacebookといった私たちが使い慣れたSNSサービス上でも送金サービスが始まっています。
こうした動きによって、スマホやタブレットで簡単に決済ができたり、銀行口座と連携して簡単に家計を管理できたり、投資に必要な情報提供やAIの支援を受けられたり、家族・友人同士でお金や仮想通貨をやりとりしたり等々、私たちの生活を便利にする様々な金融サービスが広がりつつあります。

●ITによる新たな金融サービスの鍵を握るセキュリティ対策

Fintechによる新たな金融サービスの登場は、これまでの金融の形を変える可能性を持っていると同時に、ITセキュリティの専門家の立場からは、一抹の危惧も感じます。
というのも「金融サービス」は、単なる消費者向けの便利なITサービスに止まらず、経済社会の根幹を支える重要インフラだからです。
「お金」は日本経済の体中をめぐる血液であり、お金の動きが滞ることがあれば、それは私たちが生活する社会全体から活力が失われることを意味します。
これまで金融機関は、金融庁の監督の下でシステムの安定・安全を厳しく要求されてきました。しかしながら現在、FintechとしてもてはやされているIT企業の中で、きちんとした金融機関並みのデータの安全性やサービスの安定稼働を提供できるスキル・体力を備えている企業はごく一部ではないでしょうか。
「メッセージが届かなかった」「クラウドに預けたデータが消えた」といった障害でIT企業が謝罪する姿をたびたび見かけます。しかし金融サービスでの障害は、「送金したのに行方不明になった」「保管していた預金が消えてしまった」という事態に直結するのです。
便利なFintech系サービスは積極的に活用していきたいですが、一方、その利便性の裏にあるリスクも考慮して、「自分のお金のことを任せる」という信頼に値する相手かどうかを見極めながらサービスを選定されることをお勧めします。

** コラム執筆 **
株式会社インフォセック
プリンシパルコンサルタント 田中 洋